天上の花園ー
かつて、一度だけ見たことがあります。
看護師という仕事をしていると、
危険な状態に陥った患者さんが一命をとりとめる状況に遭遇することは
それほど珍しくはありません。
そして、死の淵から戻ってきた患者さんは、
お花畑や川を見たとか、
とても心地良いのに誰かの声(ご家族やご先祖様が多い気がします)に
引き戻された、ということを話される方が多いです。
そして、あのままあそこにいたかった、とも。
いわゆる「臨死体験」、なのでしょうが、
あまりにも皆さん同じような経験を話してくださるのです。
しかも、生還し意識が戻った直後、まだ半ば朦朧としているときにこそ。
ですので、いわゆる三途の川や極楽浄土というのは
本当にあるんだろうな、と思っています。
私自身はまだそんな体験をしたことはありませんが、
母の葬儀で一瞬だけ垣間見たことがあります。
かれこれ8年になりましょうか。
元気だった母が急逝しました。
あまりに突然でした。
私は夜勤中で、その日はどこか胸騒ぎはしていたものの
それが何を意味するのかまでは分からず、
勤務先に電話がかかってきた時にその意味を
思い知らされたのです。
職業柄か、あるいは突然過ぎたからか、
しなければならないことに追われてなのか・・・
私は泣きませんでした。
葬儀、告別式が終わり、出棺前の最後のお別れのとき。
棺に別れ花を飾っていると、
突然額の奥に映像が-
それは、天上の花園の光景でした。
母のいる場所。
それを見た瞬間、涙があふれました。
花が好きだった母。
早くに亡くなった父が待つ明るい世界。
ようやく行ける、会える。
それが分かり、
ああ、本当に母は逝ってしまうのだと、
思いました。